鬱/適応障害/ADHDなど心の問題を親・家族に理解してもらえない

  • つらいと言ったら甘えていると言われた
  • 病名を伝えても、『そんなの気の持ちようでしょ』と否定された
  • 無理をして笑っているのに、気づいてもらえない

うつ病、躁鬱、適応障害、ADHD、不安障害、発達障害、パニック障害など、目に見えない心の問題を抱える人にとって、親や家族に理解されないことは、大きな孤独と痛みを生みます。

特に身近な人だからこそ、「わかってほしい」「寄り添ってほしい」と願う気持ちは自然なこと。

でもその思いが伝わらず、逆に傷つく言葉を浴びてしまうと、「このつらさをどうやって抱えていけばいいのか」と立ち止まってしまうことも。

この記事では、心の不調を抱える人が、なぜ親や家族に理解されにくいのか、その背景を紐解きながら、気持ちの整理の仕方や自分を守るための考え方を、心理カウンセラーの視点から丁寧に解説していきます。

なぜ親や家族に「心の問題」は理解されにくいのか?

見た目ではわからない「心の不調」

心の病気は、外から見てすぐに分かるものではありません。

高熱や骨折のように明確な“サイン”があるわけではなく、無理して笑ったり、頑張って仕事や学校に行っている姿を見ると、「元気そうじゃん」「怠けてるだけでは?」と誤解されてしまうことがあります。

家族の中で特に、“結果”や“行動”ばかりを見る傾向のある親ほど、この誤解が深まりやすいのです。

「精神疾患=恥ずかしいもの」という古い価値観

日本ではまだまだ、精神的な病気に対する偏見が根強く残っています。

「うつ病=弱い人」「ADHD=問題児」という誤ったイメージを持ったままの親世代も多く、自分の子どもにそういった診断名がつくことを受け入れられない人も少なくありません。

「そんな病気、うちには関係ない」と目を背けたり、「しっかりしろ」と過剰にプレッシャーをかけてくるケースもあります。

親自身が抱える“未処理の感情”やストレス

親自身が心の傷を抱えていたり、ストレスや不安を処理しきれていない場合、子どものつらさに寄り添う余裕がなくなります。

「自分のほうが大変なんだから、あんたまでそんなこと言わないで」と怒りをぶつけてきたり、「私はそんなことで休んだことなんてない」と自分の体験を押しつけてくることも。

それはあなたを否定しているのではなく、親自身が“心の余裕”を失っているという背景があるのです。

理解されないことによる心へのダメージ

「自分は弱い」「甘えているのかも」と責めてしまう

否定された経験が重なると、「やっぱり自分がおかしいのかな」「こんなことでつらいと思うのは変なのかも」と、自分の気持ちを信じられなくなっていきます。

本来なら、「つらい」と感じることそのものが、立派な“サイン”なのに、それすらも自分で否定してしまうようになるのです。

孤独感と絶望感が深まる

最も安心できるはずの家族から理解されないという体験は、深い孤独と無力感を生みます。

「どうせ誰もわかってくれない」「もう誰にも話す気になれない」

そんな気持ちが、さらなる不安や症状の悪化につながってしまうこともあります。

人間関係への不安と“仮面”の自分

「本音を言えば否定される」という思い込みが強まると、他人との関係でも自分を偽るようになってしまいます。

つらいときに「つらい」と言えない。無理して笑顔をつくる。

そうして“本当の自分”を押し殺し続けることが、心に大きな負担を与えるのです。

では、どうすればいい?──自分の心を守るためのヒント

「わかってもらえない前提」で考えてみる

理解してほしい気持ちは自然ですが、まずは「完全にはわかってもらえないかもしれない」という前提に立ってみましょう。

そうすることで、「なぜわかってくれないの!?」という怒りや絶望感を、少しだけ緩めることができます。

親に完璧な理解を求めるのではなく、「わかってくれたらラッキー」「わからなくても私は悪くない」と、自分の内側でバランスを取ることが、心のダメージを減らしてくれるのです。

信頼できる第三者に話してみる

家族に理解されないと感じたときは、友人やカウンセラー、医師など、安心して話せる相手を見つけることがとても大切です。

話を聞いてもらうだけで、「わかってもらえた」「私は間違っていなかったんだ」と思えることが、心の支えになります。

感情を紙に書き出してみる

怒りや悲しみ、不安がぐるぐると頭の中をめぐっているときは、それを紙に書き出すだけでも、心の整理が進みます。

「なぜこんなに苦しいのか」「本当は何を伝えたかったのか」

自分の気持ちを客観的に見つめ直す時間をもつことで、感情の波を落ち着かせてくれます。

自分自身に寄り添う言葉をかける

親に理解されなくても、自分で自分を責めないことが何より大切です。

「それだけつらかったんだよね」 「誰もわかってくれなくても私がわかっている」そんな言葉を、自分の心にそっと投げかけてあげてください。

「親に伝える」ことは悪いことじゃない

それでも「どうしても親に伝えたい」という気持ちがある場合は、伝え方を工夫してみましょう。

  • 感情的になっていないときに話す
  • 一気に話すのではなく、少しずつ伝える
  • 「私はこう感じている」という言い方をする
  • 手紙に書いてみる

これらの工夫をすることで、親も少しずつ理解の姿勢を持ってくれる可能性があります。

伝わらなくても、「自分の気持ちを丁寧に扱った」という経験は、必ずあなたの自己肯定感につながります。

おわりに──あなたの感じていることは、まちがっていない

心の問題は目に見えない分、軽く見られてしまうことがあります。

でも、あなたのつらさは、確かにそこにあって、あなたが感じている痛みは“まちがい”ではありません。

たとえ家族にわかってもらえなくても、それを自分の価値に結びつけないでください。

「私は私のままでいい」 「理解されなくても、生きていていい」

そう思えるようになるまで、時間がかかっても大丈夫。

安心できる人や場所を少しずつ見つけて、あなたの心を守る術を一緒に育てていきましょう。

あなたの存在が、もっと優しく抱きしめられる世の中になるように。

今日もここにいてくれて、ありがとう。