本当は違うことを思っているのに、つい「大丈夫」と言ってしまう。本音ではやりたくないのに「いいよ」と笑って答える。そんなふうに、自分の気持ちに正直になれないと感じている人は、とても多くいます。
自分の気持ちを飲み込んでしまう癖、それは決してあなたの弱さではなく、これまでの人生の中で身についた“生きるための知恵”だったのかもしれません。
でも、長い間そうしていると、本当の自分が見えなくなったり、心がすり減ってしまったりすることもあるのです。
他人に合わせることが当たり前になった背景
「自分の気持ちを出すのはわがままだ」「迷惑をかけてはいけない」そんな価値観の中で育ってきた人にとって、自分の感情や希望をそのまま口にするのは、とても難しいことです。
家庭や学校、職場で“いい子”“気が利く人”“空気が読める人”として求められてきたなら、なおさらです。
無意識のうちに「自分を抑えることが正解」と感じてしまい、自分の気持ちを表に出すことに強い抵抗を覚えるようになります。
本音を見失ってしまう心のメカニズム
人に合わせることが習慣になると、自分が何を感じているのかもわからなくなってしまうことがあります。
例えば、「本当は疲れているのに、なぜか予定を断れない」「やりたくないけど、理由が見つからなくて流されてしまう」といった場面。これは、自分の感情にきちんと触れる機会が少なくなってしまった結果です。
長年、自分を後回しにしてきた人は、まず“自分の本音を感じること”から練習する必要があります。
正直な気持ちを取り戻すための小さな練習
では、どうすれば自分の気持ちに正直になれるのでしょうか。
まず大切なのは、「自分の気持ちに気づく」こと。
紙に思っていることをそのまま書いてみる、独り言のように心の声をつぶやいてみる、些細なことでも「私はこう感じてる」と意識してみる。
このような小さな行動を日常に取り入れることで、自分の感情との距離が少しずつ縮まっていきます。
「わがまま」と「正直」の違いを知る
多くの人が誤解しているのが、「自分の気持ちを出すと、人に嫌われるのでは」「わがままだと思われたくない」という思いです。
しかし、正直になることは、相手を否定することでも、自己中心的になることでもありません。
「私はこう感じている」「本当はこうしたかった」と自分の立場を伝えることは、人間関係を壊すどころか、むしろ信頼を築くための第一歩です。
気持ちの伝え方にひと工夫を
どうしても相手に言いにくいことがあるときは、伝え方を工夫することでずいぶん楽になります。
「◯◯してくれてありがとう。でも、実は少し無理をしていたかもしれない」「気を悪くしたらごめんね。
でも本当の気持ちを伝えてみたいんだ」など、相手を思いやる言葉を添えることで、誤解されにくくなります。
誠実に気持ちを伝える姿勢は、きっと相手にも伝わります。
少しずつ「正直になる練習」を重ねよう
最初からすべての本音をさらけ出す必要はありません。
自分にとって安全な相手、安全な場所から始めてみましょう。
SNSの非公開アカウントに感情をつぶやく、信頼できる友達に一言だけ本音を話してみる、カウンセラーとの対話で練習してみる。
少しずつ、「正直になる体験」を積み重ねることで、自分の心にも安心感が生まれてきます。
自分の気持ちは自分を守る大切なサイン
自分の本当の気持ちを押し殺して生きていると、いつか心や体が悲鳴を上げてしまうことがあります。
イライラが積もって爆発してしまったり、体調を崩したり、何も感じられなくなってしまったり…。だからこそ、「正直な気持ち」は自分を守るための大切なセンサーです。
「嫌だな」「違うな」と思ったとき、それを無視せずに、自分の心に「今そう感じてるんだね」と優しく声をかけてあげること。
それが“本当の自分”と仲直りする第一歩です。